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一般社団法人日本染色協会

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スクリーンメッシュとスキージ
イタリア・コモでは相互関係をデータ化

イタリア・コモ地区の捺染工場各社はフラットスクリーン・メッシュとスキージの相互関係を系統的にデータ化し、そのデータはコモ全体の捺染製版、捺染工場に公開されている。コモでは、スクリーンメッシュとスキージの相互関係よりも、デザインをいかに巧みに製版するか、その技術の良さに重点を置き、それをスクリーンメッシュ、スキージ、色糊との相互関係で支援していく。そういう姿勢を強く感じ取れる。だから捺染処方も日本と比べ、添加される化学物質の種類は少なく、色糊の成分は日本と比べ素直である。

コモの捺染関係者の姿勢を重ねて言えば、世界一流のデザイナーと結びつくことに力を入れているといってよい。

ラッティ社の検反出荷場を見ると壮観だ。世界一流のブランド名別に検反、出荷している。紗張りしたスクリーン捺染型を見せてもらったが、有名デザイナーのサイン入りが多かった。コモではなにをおいてもデザインが、すべてに優先する姿勢を感じ取れる。コモでは、「それで各工場は勝負しているのだ」と、堂々という人が多い。それを裏付けるようにラッティ社、マンテロ社ら一流クラス以外の捺染工場でも一流デザイナーや新進のデザイナーとの結びつきが多い。そのため捺染製版業者とパイプをつなぐ行為が多い。そういう背景があって、コモの捺染製版業者たちは日本の製版業者と異なり、権威を示す服装をしているのが印象的だ。

コモの大手捺染製版会社の場合、有名デザイナーから渡されたペーパーデザインを製版する人、オリジナルデザインを描く人を擁し、日本の捺染工場のように下請けの雰囲気が全くない。白い上衣を着用して仕事をしている人が目立つ。そういう光景を見ると、まるで大病院の治療室や薬局ルームに居るような錯覚を覚える。

それら業者たちの話によると「パリやイタリアのデザイナーがコモへ来て、先ず訪問する先は我々捺染型屋ですよ」と胸を張って話す。

コモ市内の各製版会社を訪問して、誰しもが感じることは彼等の芸術肌だ。ペーパーデザインからトレース、製版した作品結果を、ペーパー上に美しく絵刷したものを、うやうやしく取り出し、「どうだ」といわんばかりの彼等の姿勢には愛嬌さえ感じる。

さて、製版方法だが、日本とコモではフラットスクリーン(紗)の型づくりの方法が異なる。日本ではアルミ型枠1枚に、バイアス状態で紗張りするが、コモでは6枚以上の鉄型枠をズラリとタテ状に並べて、その上へ長いサイズの紗を覆って、紗を張る。

コモで、試みに、作業者に紗張りした型を立てかけてもらって、その姿を反対側から見ると、型を持つ人物は全然見えない。日本の紗張り型だと人物は透けて見える。それだけコモの紗一本一本の糸が分厚いことを表わしている。

コモではスカーフ、服地プリント用の紗張り型にはポリエステル・モノフィラメントの紗を主に用いているが、タオルのプリントにはマルチ/マルチの紗を使用している。多色使いの線柄を駆使した帆船模様など巧みに捺染表現する捺染工場がある。その作業者は「私はコモのミケランジェロ」と目でウインクするなど、コモには茶目っ気な人が多い。

コモの紗が日本製よりも厚いということは、当然、捺染で使用する色糊は、コモと日本では異なる。コモではメッシュ間の通りがよい色糊が好まれる。

前述したスクリーンメッシュとスキージとの相互関係を表したデータは、スクリーンメッシュとスキージとの相互関係中からどのデータで指定されたデザインを捺染で巧みに表現出来るか、その基礎になるデータだというのがコモの考え方のようだ。

それについては反論する人もあろう。しかし次のような評価も無視は出来ない。

「コモの捺染は物理的な捺染を感じる。日本はケミカル捺染の特長がある」(訪伊染色工業視察団(団長 中山久英氏)のリポートより、1989年)。

(K.S)

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